スペインは強かったですね。
序盤・中盤・終盤、隙がないよね。

1.何が強い? ~チーム哲学~
守備役/繋ぎ役/攻撃役と役割ごとに「分断」 しすぎるのではなく、
11人一体が、さながらスイミーのように、「スカッド」 として連動して動けること。
いわゆる「同じ車両で動く」というやつ。
だからこそ、長短のパスが繋がりやすい。
だからこそ、こぼれ球を再度回収しやすい。
だからこそ、守備時には相手の突ける穴が無い。アルゼンチンでさえ窒息させられ続けた。
スペインは「パスサッカーが強い」というのは、 この原則にもとづく”結果”でしかない。
(にもかかわらず、その”原則”がそもそも無い中で「 強いパスを細々と繋ぐこと」が目的になると、
それは単なる「爆弾の押し付け合い」にしかならない。)
2.何が強い? ~個人戦術~
”原則”が整っていたって、 例えば僕のような下手くそが11人集まっているだけならば当然意味がない。
じゃあスペインの選手は何が「上手い」から、 この原則に意味を持たせているのか?
いわゆる”足ワザ”的な部分は、 ヤマルやニコは目立ってはあれど、
全体としてはぶっちゃけそこまで突出して上手いわけでもないと思 う。
(だったら、ブラジルとかの方がよっぽど上)
ただそれ以上に、「基礎技術」がとにかく高い。
じゃあ「基礎」って何?
そもそも論、サッカーとは所定の時間内で、 相手からより多くゴールを取った方が勝つスポーツ。
そのための”邪魔”になるのが相手の存在。
であれば、
①その相手を「かわす」「剥がす」ことができれば、 よりゴールに近づく。
②その相手を「追い越す」「競り勝つ」ことができれば、 よりゴールに近づく。
③その相手を「削る」「威圧する」ことができれば、 相手は怯んでまたゴールへと近づく。
結論から言えば、スペインは①が突出している。
(なお②は主にスラブ圏やアフリカのスタイル、③は②の派生系として主に南米のスタイル)
相手がプレスをかけてきたら、 その勢いを折るようにドリブルコースを変えて相手を出し抜く。
相手が意識を欠いている箇所の味方に、 パスを様々な角度から当ててボールを前に運ぶ。
その「意識を欠いている箇所」を創出すべく、 素早くポジショニングを直す・その場にとどまる。
細かいマニアックな用語はさておき、本当にこれだけ。
だからこそ必要になるのが、トメルケルはもう当たり前の前提として、「正対」だったり「運ぶドリブル(コンドゥクシオン)」だったり「インサイドキック 表/裏」だったりの個人技術。
こういったシーンは、 スペイン代表を追っていればいつでも見られるようなシーンです。
ペドリ、ダニ・オルモ、バエナ、ファビアン・ ルイスあたりの動きは、1人にフォーカスして追うだけでも相当な収穫があります。
そして、そこをベースに、ヤマルやニコといった「 トリックスター」がスパイスになる。
だから、各駅停車のパス一辺倒では終わらず、”その先” を割って入ってさらなる一歩を踏み出すことができる。
またさらに言えば、こうした「チームの胎動」 全体をコントロールする、”ピッチ上の監督”がいること。
これがめちゃくちゃデカい。マジでデカい。
それはつまり、チームの動きの「重心」であり、「錨」 となる存在。
それが、「アンカー」であり「ピボーテ」と呼ばれる存在で、 ブスケツやらロドリが担う役目。
だから、ロドリは大会MVPなんです。
これ、僕が知る限りではありつつも、 日本のトップクラスにはこのタイプの選手が本当に”居ない” んです。
(要するに、育成指針の中で、後述の「美学」によって高く評価されないから育たない)
3.日本に応用できるか?
多分無理。
やっぱり、「文化」が違いすぎる。 それをワールドカップでは再度痛感しました。
スペインで求められる要素は概ね上述の通りであるのに対し、
日本では「球際」「縦に早く」「球離れ・テンポよく」 が重視される。
相手を”動かす”サッカーというよりも、 まずは自分からアクションを起こすサッカー。
だから、純粋に「アスリート能力」が高ければ高いほど良い。
ちんたら走る「錨」なんかよりも、 オープン合戦でヒートマップを真っ赤にできるような体力オバケこそ礼賛される。
だから、 遠藤航やら佐野海舟やら前田大然やら堂安律やらが次々に生まれる 。
そういう選手たちに、 というかそういうスタイルが美徳とされる国に対して、
「スペインに倣え!」を急に言い出してもまず無理な話で。
上述のサッカーを成り立たせる「ロドリ」も「ブスケツ」 も居ないのにこれをやったって、
チームバランスが瓦解するだけで終わってしまう。
本当にそれがイケるならば、 志半ばでJを去ったロティーナやらポヤトスやらアルベルやラバインやらは
とっくに「名将」 として称えられていくつものタイトルを手にしていたワケで。
だったら、無理にヨソのやり方を嵌めるのではなく、「 日本の強み」 をさらに伸ばせる方向で行った方が良いと真剣に思ってます。
(というか、入れたところで「○○のサッカーは守備的で退屈」 とサポーターから切り捨てられるのがいつものオチ…)
4.日本の強み(美学)って何?
走力・球際・献身性。
これは、今大会を見ても、しっかりと世界にも通用していた部分。
ブラジル相手にさえ、前半はまさにこの最たる人物である佐野・ 前田がキーマンとなって
完璧なゲーム運びを見せていた。
けど、 それでもやっぱりトーナメント1回戦の壁を突破できなかった。
ということは、「まだ足りない」。
まだ足りないなら、伸ばすしかない。
そして、このサッカースタイルを伸ばした先にいるのは、 スペインではなく
アルゼンチンやらウルグアイやらパラグアイやらの荒々しい奴ら。
あいつら、スイッチ入ったタイミングの”圧” はそれはもうとんでもない。
猛獣そのもので、 相手はそこに噛みつかれるのをただ甘んじて受け入れるしかなかっ た。
日本の「品行の良さ」はできれば保たれてほしいなと思いつつも、 世界で勝てるように
本当に強くなるためには、多少はそれを犠牲にしてでも、” その方向性”に進むことを決意するしかないのかも。
(そういう意味で、日本人としての「品行」 をとにかく大事にしていた森保監督の退任はちょっと心配でもある 。)
次の世代に向けて、今が正念場。
今が、「本当の強み」 を見つめなおすタイミングなのかもしれないです。


















































