第二次手倉森政権が失敗した理由
①クラブとして、最優先事項がチームのトップディビジョン維持ではない
慢性的な財政難がいよいよ限界を迎えてきたクラブにとって、最優先のタスクは日銭をためて行くこと。
社長曰くそのことは「一丁目一番地」の課題である、と。
そういう事情もあり、「地方行政にも詳しい」手倉森氏を招へいした経緯からは、スカッドとしての戦力ダウンが生じようがクラブの存続は何としても可能性を上げたい、という思いが伝わります。
高年俸選手をシーズン途中で3人解雇した事実からもそれは感じますが、換金対象の実力は確実に有るような選手を、違約金を”払って”まで追い出す必要があったかは個人的に疑問です。
②結局、サッカー観は10年前の「栄光」からアップデートされていない
特定選手個人の能力や走力に依存した”属人的なサッカー”で栄光をつかみかけてしまった分、やはり氏にはそれを「至高」と感じさせてしまうのでしょう。
前々監督は、この氏とは全く違うやり方、すなわち「チームに共通のルールを設けて誰が出ても崩れないようにするサッカー」を構築して、同じく「国内2位」を達成しました。
どちらがより効率的で、そして選手に負担を強いないサッカーかはきっと明白でしょう。
誤解が生じて後出し呼ばわりされるのがイヤなので付け足すと、何も「ソリッドなサッカー」が古いと言っているのではありません。
むしろ個人的にはガチムチなサッカーこそ見ごたえがあって好きです。
大事なのは、ボール保持志向にせよ走り勝つスタイルにせよ、そこに”チームとして”やり方が統一されているかどうかです。
「理想の攻守」が特定の選手の能力に依存し(ゆえに、その柱選手をシーズン中ずっと引っ張らないといけない)、違う選手を起用してしまえば全くもってピッチ上の状景が変わってしまうようなサッカーは厳しい、というのが私見です。
③「ミス待ちサッカー」
氏が前クラブを率いていた際、他クラブに対して言い放ったこの言葉が今突き刺さっていることに、ご本人はお気づきでしょうか。
いわゆるリアクションサッカーです。イタリアのサッカーと呼ばれがちなサッカーです。
でも言いたいのはそのスタイルがダメという話ではなく、”相手がミスしてくれない限り得点機がない”現状こそがその中でも最悪の形であることです。
前線で誰もプレスを掛けなければ相手が鬱陶しがる訳もないし、チャレンジングな縦パスを入れる選手がいなければ相手としても平静を崩す必要がありません。
これでは、相手が”本当の意味でのミス”(判断も精度もまずいプレー。サウジアラビア戦のあのシーンなど)をしてくれない限り、この属人化し切ったチームでは得点の可能性がありません。
④重心が低いが、守り切れていない
③と重なりますが、一応の形としては「しっかり耐えて、攻撃ではワンチャンスを狙って行こう」という姿勢でした。
有識者は、例えばこの姿勢のもと後半75分から攻め込んだ試合を「効率的」と称されていたような気がしますが、問題なのはその試合も含め、言うほど耐えられていないことです。
最下位のチームにしては、例年の降格クラブと比べても失点数は少ない方だとは思います。
セーブ数リーグ1位のGKが後ろにいるからです。簡単な話ですね。
この彼が、幸か不幸か守備のまずさを覆い隠してしまっているので、失点数だけ見ればわりかし耐えられているようには見えます。
が、もう少し考えれば”GKがリーグ1位のセーブ回数を記録せねばならないほど、相手に好機を作られている”ことが分かり、これは全然耐えられていないでしょうと言える訳です。
もっと言えば、守備陣がダメというより、チームとしての形が無いこと、つまり
・ボール持ったけど、どうやって攻撃すればいいか分からない
・ボール非保持の味方も、どこのスペースに自分は身を移せばよいか、決まってないから分からない
・そうしてもたついている間に相手にボール取られる
・想定外のタイミングで取られちゃったので、想定外の位置取りや距離感でとりあえず後方へ追いかけるしかない
・FPじゃもう捕まえられない、あとはGK頼む
これを何回も何回も再現してる限りは二部でも厳しいです。
それでは最後に、現状はともかくとして来年以降どうすべきなのってところで持論を述べると、まずはクラブ存続が最優先なのでそこは経営のプロの人にうまくうまいことやってもらって(分からん)、
ピッチ上の話に限定すれば、局面ごとの立ち位置とか距離感にルールを設けられないならば、フィジカル強化の優先度を最重要にして「前プレ・ロングボール・露骨なCK狙い」サッカーで涼しい時期をゴリ通していくのが目下の現実的な理想です。
非現実的な理想は急に石油王がこのチームを気に入ることです。
もちろん、いちサポーターとしてはこれからの試合全部勝って、他の残留争いクラブが全部負けてくれることを心から祈っています。
ただあくまで、シーズンという長距離マラソンを振り返ってみての観察と感想でした。
今日の試合も、勝ってくれると祈ります。